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Interview Masayo Kudo

MAJA HOTEL KYOTOとCAFE AALTO KYOTOには、フィンランドを感じる様々なしつらえが施されています。その重要な構成要素のひとつである家具。プロダクトデザイナー/ハッリ・コスキネン氏と共同でその特徴的な家具を生み出した、工芸ブランド『iwatemo』を立ち上げた株式会社モノラボン代表取締役・工藤昌代氏に、この家具を製作したいきさつ、そしてモノづくりかける思いについて語っていただきました。

  • インタビュー:工藤昌代
  • 聞き手:池田好孝

まず新たに立ち上げた工芸ブランド『iwatemo』について教えてください。

南部鉄器などを中心に、岩手は古くからものづくりが盛んな地域。こうした地域特性を背景に職人たちは優れた技術を有していますが、その多くが小さな工房であり、国内の競合との差別化に関わる商品開発やさらなる販路拡大など、単独では解決し難い課題がありました。

そこで株式会社モノラボンでは、北国・岩手と気候風土や人々の気質に相似点の多い、北欧・フィンランドのデザイナーと協働し、3つの小さな工房をひとかたまりに集約する『iwatemo』という新たな工芸ブランドを発足。北欧の視点から岩手のものづくりにアプローチし、「伝統と現代の感性を融合」するデザインとして、鉄器、椅子、磁器の3ライン・24アイテムの商品開発に取り組みました。『iwatemo』のテーマは、「HOME」。暮らしに新たな豊かさを提案する工芸ブランドとして、国内外に展開しています。

『iwatemo』は、MAJA HOTEL KYOTOをプロデュースしたハッリ・コスキネン氏が参加しています。『iwatemo』とハッリ・コスキネン氏との出会い、そしてどのような取り組みをしているのかご紹介ください。

東日本大震災の後、フィンランドに拠点を持つ方から「支援をしたい」との申し出があり、そこからご縁が生まれ、フィンランドに足を運ぶようになりました。そんな時にヘルシンキデザインウィークの総監督、カリ・コルクマンさんと知り合い、地方におけるものづくりについて意気投合。2016年に私たちのプロジェクトをサポートしてくれている公的機関・岩手県工業技術センターが、フィンランドデザインを岩手に紹介するセミナーを開催することになり、その講師としてカリさんを招聘。しかし登壇予定だったカリさんの予定が合わず、「スペシャルなデザイナーを紹介する」と言われて現れたのが、ハッリ・コスキネン氏とヴィッレ・コッコネン氏でした。

セミナーの後に岩手の工房をいくつか視察してもらったのですが、彼らから「HOMEというテーマでプロジェクトを立ち上げないか?」との提案があり、それをきっかけに工房の職人、会社経営者、通訳、デザイナー、編集者などがメンバーとなって出資し、岩手のものづくりを海外に発信する株式会社モノラボンを設立。新しい工芸ブランド『iwatemo』を立ち上げ、鉄器、椅子、磁器の商品開発を行うことになりました。ハッリ、ヴィッレには何度も岩手に足を運んでもらい、率直な意見のやり取りやリモートでの打ち合わせを重ね、言葉や文化の違いを超えた密な関係性をつくり、現在も新たな商品開発に向けて打ち合わせを重ねています。

MAJA HOTEL KYOTOとCAFE AALTOには、KI-0202HK(chair – HK)、KI-0201HK(stool – HK)という製品が採用されています。これらの製品の開発や製作にはご苦労もあったと思います。

まず、ハッリとヴィッレが工房を訪問し、岩泉純木家具の製造を知るところからスタートしました。工房によって製造環境もそれぞれ違います。何度か試作品を送ったり、実際に岩手に来ての確認を繰り返しました。二人のデザインした椅子を製作する自信はあったものの、工房としては普段和の家具を製造しているので実は普段の工法と違うところもあり苦労したようです。ハッリの背もたれ椅子の座面と背面の接合なども細かい設計は工房の経験から実現したものです。

当初岩手県産の木材を使用することを想定していましたが、安定供給の観点と白い木目の美しさを表現するために、最終的にホワイトアッシュに決定しました。自然由来の仕上げにこだわってオイルで仕上げています。ブラックバージョンは、マットなブラックを表現するため塗装材と塗装方法を何度か繰り返し試しました。

この度、『iwatemo』のプロジェクトが「グッドデザイン賞」を受賞されましたね。

「海外協働ものづくりプロジェクト」として、小さな工房が集まって世界に発信していこうという取り組みが評価されたことは、大きな励みになりましたし、ヴィッレもハッリもとても喜んでくれました。これからも彼らと協力しながら、『iwatemo』を通して様々なチャレンジをしていきたいと思います。

最後に、モノラボンのモノづくりに対する思いを教えてください。

日本の地方には、優れた技術を持った職人がいて、魅力的な工芸がたくさんあります。しかし、その多くがとても小さな工房で、資本力の乏しさや後継者問題などの理由から継続することが難しく、廃業していく工房もたくさんあります。こうした地方のものづくりをフォーカスし、海外にその素晴らしさを発信する仕組みをつくることで、ものづくりの未来を少しでも支える力になりたいと考えています。

日本人の発想とは違うデザイン視点を取り入れることは、国内外に訴求できる製品の付加価値と発信力を高めること。そして、世界中の人々に評価をもらえる場を創ることは、職人の向上心や収益を高めることにもつながります。まだ始まったばかりではありますが、私たちのチャレンジが地方の小さな工房や工芸に関心のある若者にとって可能性を感じてもらえる一助になれば幸いです。

MAJA HOTEL KYOTOとCAFE AALTO KYOTOの椅子に身をゆだねるとき、その製品が生まれるまでに、日本のモノづくりを支える職人の技と、フィンランドのデザイナーによる新しい感性の融合という物語があったことに、一度思いをはせてみてはいかがでしょうか。

時を経るごとに磨き上げられてきた職人の技、それを工芸ブランド『iwatemo』のもとに結集させ、国内のみならず世界に向けて展開している工藤昌代氏。詳しくは『iwatemo』のHP、Facebook、Instagramをご覧ください。
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