SIDE STORY

写真:野沢朋央

Interview Yasuharu Okochi

MAJA HOTEL KYOTOとCAFE AALTO KYOTOの空間を、「サウンド」によってひとつの世界観に統一した、サウンドクリエーター・大河内康晴氏に、空間のサウンドデザインに込めた思いについて語っていただきました。

  • インタビュー:大河内康晴
  • 聞き手:池田好孝

フィンランドでは、短い夏を森や湖畔の快適なコテージで過ごす生活スタイルが定着しています。MAJA HOTEL KYOTOには、フィンランドのコテージのように、利用される方が自分の家のようにくつろげるような、快適な「場」がしつらえられていますが、ここにサウンドデザインをされるとき、どのようなイメージをされましたか?

僕たちSound Coutureチームはベッドルームのサウンドデザイン(この仕事を僕らは音築家の仕事だと思っています)と、CAFE AALTOのサウンドのスタイリング(キュレーションと編集)をするにあたり、特に大切にしたことは、北欧の国フィンランドのもつ透明感を音で表現することでした。

北欧の空気感というものを色に例えるならば鮮やかな原色でもなく、パステルカラーでもなく、水彩画のように水で滲ませたようなブルーグレーや、スモーキーな淡いグリーン、パープルではなくモーブ、白というよりオフホワイトというイメージがあります。そのイメージでまずは発想を膨らませていきました。

そのイメージを具体的にサウンドとして表現されるとき、特に大切にされたことは何でしたか?

僕たちの仕事は「空間の空気感」を創ることだと思っていて、訪れるゲストに決して音楽を聴いてもらいたいのではなく、リラックスして欲しいと思っています。ですから音の輪郭が前に出過ぎないように、優しく漂う空気を作りたいと思いました。

MAJA HOTEL KYOTOとCAFE AALTO KYOTOは、建物の内部が螺旋階段でつながっています。ホテルとカフェを一体ととらえてサウンドデザインをされるとき、そのコンセプトはどのようなものだったのでしょうか?

先ほどの質問の答えにも通じているのですが、香りや、色が混ざる時、良い香りや美しい色になる場合もあればその逆もありますよね。僕らはまず、MAJA HOTEL KYOTOという全体のコンセプトを先程述べたように「北欧の透明感」を軸にしました。そしてHOTELのベッドルームでは優しい気持ちでリラックスできる(周波数にもこだわりました)眠れるような音をサウンドデザインし、CAFE AALTO KYOTOは京都の利用客のニーズ(ランチがとても賑わうと伺っていたので)に合うような構成とテンポでその時間の目的ごとにスタイリングしました。

ベッドルーム、カフェという2つの異なる目的と文脈があり、そのどちらも無視することなく音が混ざりあった時に不協和音にならないようにとても気をつけました。実際に僕たちも音を作るまでに2回ほど視察をして、「北欧の空気」「リラックスできるホテル」「活気のあるカフェ」この3軸のエレメントの最大公約数を取って全体の音楽の構成をデザインしました。

最後に、完成したサウンドデザインについての思いをお聞かせください。

僕たちの仕事は常にアーティスティックな感性を必要とされるので、もし僕たちのことをアーティストと呼ぶのであれば、僕たちが手掛けるサウンドデザインやサウンドスタイリングは作品なのかもしれません。しかし、僕らは自分たちの作品を創っているという感覚は全くなく、気持ちは常に100%そこで過ごす人たちの居心地に意識を向けています。ですから目的にあった「音」や「音楽」をデザインしているだけだと思っています。ただ、それが作品のように美しいと皆様に感じていただいているのならとても光栄に思います。

ご宿泊いただいたお客様から館内に流れる音にとても癒されたというコメントをいただいています。素晴らしいサウンドスタイリングを誠に有難うございました。

様々なビジネスシーンにおいて、その空気感を音で表現してきた大河内康晴氏。
株式会社サウンドクチュール代表・サウンドデザイナー/大河内康晴氏のプロフィールとSOUND CoUTURE inc.、大河内康晴氏公式インスタグラムは以下をご覧ください。
SOUND CoUTURE inc.
Yasuharu Okochi Official Instagram